アイドルライブの撮影に関して「今日は照明がよかったのでいい写真が撮れた」「あのライブハウスは撮りにくい」などのツイートを目にすることが多いので、撮影可能時の照明や環境に関して考える記事をつくりました。もちろん撮る側の欲求を満たすためだけではなく、きれいでかわいい写真が撮影しやすい環境は撮られるアイドル側にとっても望ましいものだという考えによるものです。撮る側の意見や要望と、照明などの環境を作る側の話をまとめることで見えてくるものがあります。アイドルや撮影に関わる多くの方々にお読みいただけると幸いです!
取材・撮影・構成/前川元
アイドルライブの撮影において重要なのは”好きなアイドルをきれいにかわいく撮ること”です。そのためにはどうすればいいのかといえば、個人レベルで言えば“良い機材を揃えて技術を磨く”に尽きます。これはもう間違いないです。好きなんだから、楽しいんだからできる範囲で全力でがんばるところですよね。とはいえ趣味に使えるお金や時間や技術の成長は人によって差があります。どうしたって“できる範囲”にバラつきがあるので、公開される写真にもバラつきが出てしまいます。そうであるなら、ファン個人のがんばりはがんばりとして、きれいでかわいい写真が撮れるように撮影時の照明や環境に関して考えていくことが全体的な底上げにつながるのでは、というのがこの記事の趣旨です。
「ライブハウスによって設備が違うのに照明や環境について考える意味があるのか」という疑問もあるかもしれませんが、設備的な制限があるとしてもオペレーションによって変わってくることもあるかと思います。それに、実際に照明を作るオペレーターの方が撮影に関してどの程度意識しているのかという部分も気になります。今回は、そういったところをアイドルライブを数多くこなしている梅田amHALLの照明担当村上さんにうかがってきました。事前に集めたライブ撮影者からのアンケート内容に答えていただくかたちで、なかなか聞く機会のない照明側のお話をしていただいています。
そして、その話を踏まえて「せっかくの撮影可能ライブ・可能曲ですから、こうしていただけたらより良い写真が増えるのでは」というアイドル運営様、ライブハウス様、イベンター様への提案もしています。アイドルのきれいでかわいい写真を増やすための、前向きな提案としてお読みいただけると幸いです。
amHALL 照明オペレーター 村上朋美さん
目次
照明オペレーションについて教えてください!
–最初に基本的な質問になるんですけど、照明さんのオペレーションっていうのはどういう風にやってるんでしょうか? 大がかりなワンマンとか事前の打ち合わせがあるものはまた違うと思いますが、対バンとかの場合はステージの動きに合わせて即興で光を作っていく感じなんでしょうか。
村上 事前の準備と、曲の展開を先読みして反射神経で操作していきます。人によって違うのであくまでわたしのやり方なんですけど、基本的にいろんな明かりのパターンをフェーダーに組み込んでて、それを切り替えていくんです。Aメロはこの明かり、Bメロはこの明かりっていうのをその時その時でつけていくっていう。
–照明の組み合わせパターンのプリセットみたいなものを作って用意してるってことですか?
村上 そうです。雰囲気を知ってるアイドルとか何回かやってる曲だと最初はこのパターンでサビはこのパターンに切り替えるとか自信をもってできるんですけど、初見とか新曲だととにかく何がきてもいいように構えて待ってます。来た!これや!って押す感じで(笑)。
–それって、準備しつつもちょっとした賭けになりますよね(笑)。
村上 なりますね~。はずれたり、ワンテンポくらい遅れることもあります。最初の頃は1回1回くよくよしてたんですけど、今はもう気にしてないです!(笑)
–今後はちょっと遅れてる時があっても「今日はけっこう大変なのかも!」と思って楽しむようにします! そんな話を踏まえたうえで、「撮影可能なアイドルライブでの照明の話」に入りたいと思います。まずですね、ライブを撮影可能にすることの目的をアイドル運営の方々に聞いたんですが、おおむね次の3つだったんですね。
1 撮影したいファンへのサービス
2 SNSで公開してもらうことでの宣伝効果
3 特典の一環としてのビジネス(有料の場合)
で、これを踏まえて最初にお聞きしたいんですが、撮影可能な場合はそのことを意識しているものなんでしょうか。
村上 してます! 曲にもよるんですけど、できるだけ明るくしようと心がけてます。やっぱりアイドルさんなんで、表情がしっかり撮れないとイヤじゃないですか。特に有料の撮影席がある場合はすごくプレッシャーです。お金を払ってるのに暗くて全然撮れなかったとかになると申し訳ないですから。撮る場所やステージが見える角度によっても光の当たり方が違うので、撮影席の場所なんかも知っておきたいくらいです。
–思っていた以上にだいぶ意識してくれてた!
村上 ただ、曲の雰囲気とか歌詞とか世界観とかに合わせて照明を作るのが基本でありこだわりでもあるので、ロック系の激しい曲なんかは点滅したり暗くしたりっていうのが多くなります。こういう照明でっていう指示もあったりしますし。
–そのへんはセトリによってくる部分が大きいですよね。もちろん曲に合った照明を作るのが基本だと思いますが、そのうえでも撮影可能ってことを意識してくれてるかどうかで全然違うと思います!
撮りやすいのはなにより“明るい照明”です
–ここからは事前に集めたアンケート回答をもとに話していきたいと思います。「撮影しやすい照明、撮影しにくい照明」という内容なんですが、みなさんすごく考えてくれていて、わりと「照明は曲による」っていうこともしっかり踏まえて意見を書いてくれています。まず撮影しやすい照明に関して言うと、多くの人の共通意見が「とにかく明るい」なんですね。これは光量が強くて明るいということと、顔が明るく肌色がきれいに出ることの両方ですね。
村上 どう違う感じなんですか?
–光量が強くて明るいと、シャッタースピードが早くできるんですが、ものすごくざっくり言うとすごくいいレンズじゃなくてもブレずに明るく撮れるってことになります。かわいく撮れるっていうのは基本的に「ブレずにハッキリ明るく肌色がきれい」が前提で、そのうえで表情がいいかどうかっていう話になります。色が被りすぎてたり影が出すぎてたりっていうのは、第1段階で除外されがちなんです。だから、やっぱりきれいでかわいい写真を撮るための照明って意味では「明るい」に尽きると思います。
村上 やっぱりそこになりますよね。先に話した感じで、できるだけ明るく照らしたいと思いつつ、曲とのバランスを考えてやってます。
2023.2.12 すーぱーぷーばぁー!! Let’ Chu♡レコ発 『寝ても覚めてもパーリータイム!?』 @梅田amHALL
–そして撮りにくい照明としては「赤のライト多用」「バックライトのマゼンタやシアンが多い」「どぎつい色が使われ続ける…」「激しい点滅」ということで、とにかく色被りや点滅が激しいのがキツイってことですね。これはもう「明るく肌色をきれいに」の対極です。特に赤のライトが不人気ですけど、顔に赤がガッツリ被ると後調整でどうやっても厳しいんです。でも多用されるってことは演出上効果的ってことでもあるわけですよね。
村上 そうなんですよね。赤のほうが強い印象を与えるので、ロック調のかっこいい曲では赤を使いがちになってしまいます。
–確かに赤く激しい点滅とかかっこいいですし、ライブ的には見せ所なんだと思います。そこに関して言うと、激しい照明が似合う曲ならばそのかっこいいイメージで撮るっていうのもありだし、実際にそれをいい感じに撮ってる人もいます。でも基本的には、アイドルライブの写真に多くの人が求めているのはそこではないんですよね。
村上 ですよね(笑)。やっぱりかわいく撮れるのは明るい照明ってことなんでしょうけど、本当に曲による、に尽きるんです。いわゆるエモい曲とかってアイドル本人もそういう表情も作ってますから、それを際立たせるためにあえて暗くしたり影を入れたりして雰囲気を出すようにしてるので……。そこをシチュエーションとしていい感じに撮ってくれてる写真を見るとうれしくなったりします(笑)。
2023.3.31「カラフルスクリーム ゆうか生誕祭 〜ゆいいつむにのお花畑〜」
–まさにこの絵になるようにライティングをしたんや! 我ながらいい照明! ってなりますよね(笑)。でもこれ、照明は曲によってくるのが前提ってことは、逆に考えると「撮影可能な場合は顔が明るくきれいに写せる照明になるようなセトリにしてくれたらいいのに!」という話になるのかなと。こう書くとすごいわがまま言ってるみたいな感じになっちゃいますけど(笑)。実際に「かっこいい曲はライブハウスの照明さんが渋くて暗い色を使いたがるから(撮影可能の場合は)明るい曲メインにしてほしい」という意見もありました。
村上 わかってる人ですね(笑)。
–かっこいい激しい曲に強烈で激しい照明をつけるのはライブハウスとしては当然だと思います。でも「今から撮影可能曲?やったー!」という流れでそれが来るとガックリくるし、せっかく撮れるのにかわいい写真になりにくいのでもったいないっていうのはあると思うんですよ。ということで、まずは意見としてはこんな感じでしょうか。
【アイドル運営様へ】
「せっかく撮影可能にしていただけるなら、赤被りや激しい点滅が少なく明るくきれいな肌色で顔が撮れる照明が合う曲が多めのセトリにしてもらえると、メンバーのかわいい写真が増えるのではないかと思います。
特にピンポイントで『この曲は撮影可能でーす!』という場合はもれなく明るい照明が合う曲にしていただいけるとありがたいです。もしくは『撮影可能なので顔をきれいに明るく』などの指定を照明の方にしていただけると幸いです…!」
※当然ですが、世界観や新曲披露などグループの方針のほうが重要です。あくまで、せっかく撮影可能ならばそういった部分を心の片隅にでも小さくメモしてくれたらうれしいです、という要望です。
※ファンの撮影とは別の話ですが、販売予定の動画・写真の撮影がある場合もそれを踏まえた照明にすることで満足度の高い画像の商品になるかと思います。
撮影における照明への意見いろいろ
–さらに具体的な話をしていきたいと思いますが、「バックライトがキツイと撮影しにくい」という意見も多いです。前からのライトより強くてすごい逆光になってる場合は、やっぱり撮りにくくなっちゃいますね。
村上 バックライトの強弱も曲によって変わるのと、その人の立ち位置によっても光の見え方が変わってくることもあるんですよ。照明の角度がちょうど客席のほうにむいてて、光がカメラのほうに入っちゃうとか。ライブハウスによってはそういうこともあるかもしれないです。
–そのへんは立ち位置を調整できればいいですけど、お客さんとしてはそんな自由に動くこともできないですしね。
村上 撮影する時の位置決めも大変ですよね。
–最初に言ってましたが、撮影席の場所が事前にわかればオペレーション的にやり様もあるかも…ということですね。次は「背景に大きなモニターが入ると撮りにくい」。これは背景モニターで逆光になっちゃうパターンですね。
村上 わかりますわかります、モニターが明るすぎるんですよね。これはわたしも経験があります。配信ライブのオペレーションで配信画面を見ながら調整してた時の話なんですけど、背景のモニターが明るすぎると白飛びしちゃうので配信カメラ側の明るさを落とさないといけなかったんです。そうするとそもそもの映像自体が暗くなって人も暗くなってしまうっていう……写真撮影でも同じですよね。その時は照明で調整するんじゃなくてモニターの明るさを下げてもらって対応しました。
–これはオペレーションで対応可能ってことですね。
村上 そうです。ただ肉眼で見るとモニターも明るいほうが迫力あるんですよね…。うーん…でもやっぱり撮影可能な場合とか配信や映像で残す場合はバランスを考えたほうがいいかなと思います。
–背景モニターは大事な演出ですから、うまいことバランスよく見せることができるとみんなうれしいですよね。次は、「センターとサイドで明るさにムラがある」。
村上 あー、これはライブハウスあるあるだと思いました。そうならないように意識はしてるんですけど、比較的きれいに光が当たるのが真ん中なんですよ。全体が均等に明るくなるようにしたいんですけど。
–設備の話にもなっちゃいますもんね。ただ、できる範囲で意識してやっているっていうのが知れてよかったです。次、「スモークが過剰だと撮りにくい」。
村上 スモークはねえ…わたしもテンションが上がったらガンガン出しちゃいますね(笑)。
–テンションが上がるとスモークが増える!(笑)。
村上 たぶんわたしはスモークを多用するほうだと思います。光の筋を出したいので、テンションが上がると出します(笑)。ただamHALLは広さも高さもそれなりにあって扇風機もぶん回してるからすぐ消えるんですよ。
–確かにamHALLでスモークが気になった記憶ってないです。逆に広くなくて低いステージだとスモークがたまっちゃうわけですね。
村上 そうなると思います。けっこうステージの環境によって変わりますね。
–スモークがきつくてバックライトが強いって合わせ技になると、かなりボヤッとして写真的には相当厳しくなるんですよ。確かにスモークで逆光で光の筋が延びてたりすると「独眼竜政宗」のOPみたいでかっこいいんですけどね。
村上 それはちょっとわかんないです(笑)。
–ですよね。それはそれとして、この場合の希望としてはこんな感じでしょうか。
【ライブハウス照明オペレーター様へ】
「スモークがたまりやすいステージ環境の場合はちょっと控えめだと撮りやすいです。さらにスモーク+バックライト強めというのは本当に厳しくなるのでできれば避けていただだけるとうれしいです!」
※あくまで「せっかく撮影可能なら」「曲の演出意図に差し障りなければ」という場合に関しての要望です。
2023.2.12 すーぱーぷーばぁー!! Let’ Chu♡レコ発 『寝ても覚めてもパーリータイム!?』 @梅田amHALL
–次は「曲終わりで暗転するタイミングが早い」。曲終わりでメンバーがかたまる決めポーズなのにすぐに暗くなっちゃうパターンです。メンバーもいい表情とか作ってると思うんですけど、それが見える間もなくすぐ暗くなっちゃうと「早い!早いよ!」って思います(笑)。
村上 それはほんとに、撮影以外のお客さんでもそこは見たいところだと思うので代表して言います。ほんとすみません!(笑)。わたしは間髪入れない曲続きの時はあえて暗転しないようにしてるんですけど、見せ場になる曲終わりポーズとかあればセトリに書いてもらうとかするといいかなとも思います。ただ板付きをするために早く暗転してほしそうな演者さんもいますし、曲終わりは暗転を入れるのが基本的な考えですので、くみ取ってくれるかどうかは照明さんにもよってくるかもしれません。
–あくまで曲のつながりとかを踏まえたうえでの照明さん判断ではありますが、意見としてちょっと意識していただけたらうれしいところですね。
村上 照明をする側としても、そういう意見を知れるとありがたいです。ほんとに、言われないとわからないことも多いので……。
【ライブハウス照明オペレーター様へ】
「曲終わりの全員決めポーズはぜひ撮影したいポイントなので暗転のタイミングを優しくしていただけるとうれしいです!」
※あくまで「せっかく撮影可能なら」「曲の演出意図に差し障りなければ」「次の曲との兼ね合い的に問題なければ」という場合についての要望です。
2023.3.11「カラフルスクリームワンマンライブツアー COLORFUL SPRING TOUR2023 〜全国彩り計画〜 大阪公演」 @ 梅田amHALL
–次です。「マイクを持ってない人にも照明を当ててほしい」。マイクと顔が被らないし、笑顔で踊ってる自然な表情をきれいに撮りたいっていうことですね。
村上 照明としては歌ってる人を明るくする意識なので、それは盲点でした! 全体がずっと明るいといいのかもしれないですけど、その時の意図で照明を作ってるのでスポットが当たっている子を撮ってくれるとうれしいかなとも思ってました。全体を観た時に、落ちサビ等でひとりでスポットを浴びて歌ってる子がいてまわりは静止してるっていう絵というか世界観を作っていくことを考えているので…。
–難しいのが、アンケート回答的にもそうだったんですけど、どちらかといえば推しをひたすら撮りたいっていう人のほうが多いわけですよ。そのへんが考えの違いになってくると思うんです。
村上 あ、そうか。……確かにそうですよね。
2023.3.11「カラフルスクリームワンマンライブツアー COLORFUL SPRING TOUR2023 〜全国彩り計画〜 大阪公演」 @ 梅田amHALL
–もちろん、オチサビの場合は歌ってる子が主役ですから、その瞬間はその子がメインで、私を見て!という気持ちで歌ってるわけですよね。そこにスポットを当てるのは当然だし、それは撮影する人もわかってるんです。そこまではっきりしたシーンじゃなくて、Aメロとかの時には歌ってる子以外も明るくするとかしてもらえるとうれしいかな…という感じだと思います。ただ、村上さんの照明だと生誕ライブのラスト曲とかは全体が明るくてステージ上のどの子でもきれいに撮れるような印象です。
村上 意識してやっていたところでもあるので、そう言っていただけてうれしいです!
–そういう照明はほんとにありがたいです。特に生誕祭ってみんなが主役の子にくっつきにいったりとかイレギュラーな動きが多いですから、全体が明るいとそのへんもしっかり撮れますし。
村上 そんな風に、ライブ全体の流れの中で「この曲は全員を明るく」とかはしますね。
–そういう時はものすごいシャッターチャンスですよね。撮りたい子が何人かいる場合は逆に迷っちゃうかもしれませんが(笑)。そこまで全員が明るいシーンじゃなくても、1曲の間に何回かは歌ってない子にも照明が当たるタイミングがあるとうれしいですね。撮る人はスナイパーのように推しをずっと狙ってますから、チャンスさえくれれば撮れると思います。歌ってなくても、笑顔で踊ってる表情っていうのはほんとにすごくいいものなので…!
【ライブハウス照明オペレーター様へ】
「歌ってないメンバーにも照明が当たるタイミングがあると、自然な笑顔で踊っているいい写真が撮れます! 曲中で何度かはそんな場面を作っていただけると幸いです!」
※あくまで「せっかく撮影可能なら」「曲の演出意図に差し障りなければ」という場合に関しての要望です。
撮影エリアなどの環境に関して
–ここからは照明を含んだ撮影環境の話です。大きく影響するのはまずはステージの高さで、撮りやすいのはシンプルに「ステージが高い」、撮りにくいのは「ステージが低い」「脚立が禁止」「サイドのスピーカーがせり出していて演者が隠れる」「そもそも見えない」などの回答が多かったです。そもそも見えない、は撮影関係なしに普通に見る分にもキツイですけど。とにもかくにも、撮影がしやすい条件としては照明と共にステージの高さも大きな要因になってるわけですが……これはもう、アイドルファンからお金を集めて高くした甲斐がありましたね!(笑)
村上 その節は本当にありがとうございました!
※amHALLは2019年にアイドルと協力したクラウドファンディングによりステージを高くしました。さらに同じタイミングで照明をデジタル化(LEDやムービングを導入)しています!
–ステージが高いと撮りやすいのが前提ですが、そこは根本的な設備の話なのですぐにどうこうするのは難しい部分でもあります。そのうえで話を進めると、撮影しない人する人それぞれが楽しめるようにという意味では、やっぱり撮影エリアが設置されると安心安全ですよね。アンケートでは「湧く人たちの邪魔になるんじゃないかと心配」「カメコが邪魔だと思うお客さんは大勢いらっしゃると思うので、可能であれば撮影エリア指定があると助かります」という回答もありましたが、湧く人と隣り合ってるとぶつかった時のケガや機材の破損など双方への心配があります。お互いを邪魔に思ったりトラブルに発展するのも同じアイドルを応援する立場なのに悲しいですしね。ですからどちらの立場にとっても撮影エリアが区切られるのが望ましいと思うんですが、そうなると撮影エリアがどこになるのがいいかって話になってきます。
村上 やっぱり最前とかのほうが撮りやすいんですかね?
–撮影自体はしやすいし臨場感があるいい写真も撮りやすいですから、推し個人を近くで撮影するのは前がいいと思います。ただ、推しが自分の前のほうに来ないと撮れないという問題もあるかなと。
村上 撮影のチャンスが少なくなる場合もあるんですね。
–あと、「ステージが高くて近いとかなり下からの撮影いわゆるローアングルになるので気がひける」という意見もありました。運営やイベントによっては「最前は湧くファンのほうがライブが盛り上がる」という考えや方針もあると思います。ということで、アンケート回答から撮影エリアに関連するものをまとめてみました。
撮りやすい撮影エリア・環境。
「撮影エリアが前方からサイドエリアにある。サイド壁際で踏み台・脚立使用可」
「端や後方で脚立使用可能」
「客席に傾斜、後方段差がある」
–これを見ると、前方から会場のサイド・後方の高い位置から撮れるのが望ましいという感じでしょうか。高い位置といっても撮影しやすくなるほど傾斜のある会場は少ないですから、基本的にサイドや後方の壁際に脚立等を置ける撮影エリアが望まれていることになります。その場合は望遠カメラが必須ですし、もちろん縦長で後方があまりに遠い場合は別ですけど。
2023.2.12 すーぱーぷーばぁー!! Let’ Chu♡レコ発 『寝ても覚めてもパーリータイム!?』 @梅田amHALL
村上 オペ卓からもめっちゃ大きいレンズ持ってる人が見える時があって、すごいなあって思ってるんですけどあれは高いレンズなんですよね(笑)。
–そうなんですよ。高くていいやつなんです(笑)。ただ、やっぱり前方で撮るとまた違った感じで躍動感があるいい表情が撮れたりするんですよ。だから前方の全域でなくても上手と下手の一部でも撮影エリアになってると、また雰囲気の違ういい写真が増えるかと思います。望遠レンズを持ってないって人もいますしね。
村上 持ってる機材によって適切なポジションが変わってくることもあるんですね。
–逆に言うと、撮影エリアによって用意するべきレンズや機材が変わってくるとも言えます。サイドや後方からなら望遠レンズが必須ですし、最前なら広角~標準レンズや50㎜85㎜の単焦点など用意する幅が広がります。それに脚立や踏み台は使用不可だととんでもなく邪魔になるものなので、あらかじめ使用可否は知っておきたいですよね。ですから撮影エリアがどこかっていうのも大事なんですが、その撮影エリアおよびレギュレーションの告知が事前にあるかどうかも重要です。それ次第で適切な機材を用意して行けるので、結果としてよい写真につながるのではないかと思います。こういった撮影環境に関してはワンマンライブならアイドル運営、対バンであればイベンターへの希望になってくると思いますが、まとめるとこんな感じでしょうか。
【アイドル運営様およびイベンター様へ】
「撮る人も撮らない人も安心安全にライブを楽しむためには、やはり撮影エリアの設置が望ましいかと思います。エリア位置に関しては、ステージに対して適度な角度のサイドから後方壁際(あるいは一般エリアの外周)で脚立や踏み台が使える撮影エリアだと望遠レンズでしっかり撮影できます。さらに前方全域でなくても前方の上手や下手に撮影エリアがあれば、臨場感があるいい表情が撮影できるのでよいかと思います。
そして、どの場合でも事前に撮影エリアの詳細・レギュレーション(エリアの位置、脚立や踏み台の持ちこみ可否等)の告知があるととても助かります!」
※もちろん運営方針や当日にならないとわからない会場状況などいろいろな条件や問題があると思います。あくまで、せっかく撮影可能なら状況が許す範囲でそうしてもらえるとありがたいです…という提案です!
バランスをとりながらアイドルが可愛く撮れるような照明を作っていきたい
–ここまで撮影可能ライブでの照明や環境に関していろいろお話ししましたがいかがでしたか?
村上 写真のことは全然わからないので、聞いて初めてわかることが多くてありがたかったです。照明を作る側としては、(照明の)パターンを考えて作るのってすごく時間と労力がかかるんですよ。特に撮影する人にすると「なんでこのタイミングでこの照明!?」っていうこともあるとは思うんですけど、そこはセトリとかメンバーのポジションとかに沿った意図があるっていうのはくみ取っていただけたらうれしいなって思います。逆に写真を撮る人もカメラとかレンズをそろえていろいろ考えながら撮影して、写真の編集とかもすごい時間と労力をかけてるんですよね。そういうことも踏まえて、いろいろバランスをとりながらアイドルが可愛く撮れるような照明を作っていきたいと思います。
–せっかく撮影可能であるならば、より多くかわいくきれいな写真を残すことがアイドル本人・ファンともに幸せになりますから! あと、せっかくなんでお聞きしたいんですが画像編集で実際の照明から色味が大きく変わってる写真に関してどう思いますか? 世界観に沿ってつくった照明だと思いつつも、肌色がなるべく出るように全体の色が変わるくらいにガッツリ調整することもあるので照明さんにとっては不本意なんじゃないかなと。
2023.2.12 すーぱーぷーばぁー!! Let’ Chu♡レコ発 『寝ても覚めてもパーリータイム!?』 @梅田amHALL
村上 それは仕方ないと思ってます。あくまでわたしの考えですが、ライブの時はライブを盛り上げる照明として作りますけど後で見る写真としてはかわいく写っているのが1番なので。
–そう言ってもらえるとありがたいです! 逆に村上さんのほうからなにかありますか?
村上 これはファンの方が撮影するのとは別の話なんですけど、最後にステージ上で集合写真を撮るじゃないですか。あれって、こっちからは見えないのでどういう状態かすごく気になってるんですよ。自分から見るとステージの演者は逆光でシルエットになってるので。後でTwitterで見て初めてどんなだったかわかるっていう感じなんです(笑)。
–ライトの強さとかを演者に伝えてマイクで言ってもらうとか、撮影者側からいろいろ希望を言っていい感じですか? 撮るほうからすると、照明さんのやり方があるので口を出さないほうがいいのかなって部分もあったりするんですよ。
村上 あ~、わたしは言ってほしいです。
2023.3.31「カラフルスクリーム ゆうか生誕祭 〜ゆいいつむにのお花畑〜」@梅田amHALL
–遠慮なく言ったほうがいいわけですね。ライブハウスの照明さんって職人じゃないですか。こだわりが強かったり酒を飲みながらやってたり注文付けたら後で殴られるんじゃないかっていう思い込みがあって、仕事でやってる人間同士の場合は言わないほうがいいのかなって思ってました!
村上 めっちゃ偏見ですよ!(笑)。
–そうですよね。いつの時代だって話ですね。ストロボをたく場合もありますけど、ステージの照明できれいに照らせるならそれに越したことはないですし。あと運営の方がスマホで撮る場合も多いですしね。
村上 運営の方がスマホで撮る場合も、もっと明るくとか伝えてくれたらなって思います。いいライブの集合写真はやっぱりきれいに写ってほしいですから。
–間違いないですね!
村上 それと、アンケートの回答に「アイドルライブ専用のライブハウスを作りましょう」ってあったじゃないですか。私が思ったのは、撮影オンリーライブっていうのも面白いかなって。全曲撮影OKで、ずっと撮りやすい照明っていう。
–それは楽しいですよ!
村上 もう、ガンガン撮りやすい照明にします!(笑)。もちろん世界観は大事にしたうえで、今日聞いたような撮影しやすい照明に特化するっていう。
–照明だけでなく環境に関してもよく考えて撮影特化ライブ、いいですね。実際、アイドルライブ専用のライブハウスっていうものを現実的に考えると、そういう企画になるかもしれません。
村上 来た人全員、絶対きれいにかわいく撮ってくださいね!っていう。
–「箱照村神祭(ハコテラスムラカミサイ)」と銘打って…これはちょっと宗教イベントみたいでアレですね。
村上 名前はともかく(笑)。いつかそういうのもやってみたいです。そう思うくらい、撮影する人たちのいろんな意見を聞いて参考になりました!
–こちらこそ、貴重な照明さん側のお話を聞けてよかったです! ありがとうございました!
アイドルライブの撮影について真剣に考えた!【照明・環境編】まとめ
今回は撮影するファンの意見と照明オペレーター側のお話をまとめることで、アイドル運営やライブハウスの方々に向けて撮影に適した照明や環境についての提案をさせていただきました。くどいくらいに書いていますが、あくまでライブの盛り上がりやグループの方針・世界観、会場都合などが優先されることが前提であること、ライブハウスや照明オペレーターごとにやり方が異なることを考慮にいれる必要があります。そういった部分も踏まえても、撮影に適した照明・環境を検討することは個々の機材や技術にバラつきがあるファンの写真レベル全体の底上げにつながり、ひいては応援するアイドルの魅力を拡散する大きな力になっていくと思います。
もちろん、ファン個人ごとの機材や技術に関してはそれぞれができる範囲の最大でがんばりたいところですし、そうやっていい写真を増やしていく事こそ撮影の醍醐味だと思います。せっかくの撮影可能ライブ・撮影可能曲なら、自分はもちろんアイドルも他のファンも幸せになれるような写真をガンガン撮っていこうではありませんか。
取材協力
amHALL
公式HP https://www.amhall.jp/
公式公式Twitter https://twitter.com/am_umeda
コメントを残す